国際宇宙ステーション用スリットランプ試作治具の
放物線飛行による評価
演者
嶋田 和人(宇宙開発事業団 宇宙医学研究開発室)
共同演者
関口 千春(宇宙開発事業団 宇宙医学研究開発室)・山崎 由久(有人宇宙システム 利用運用部)・佐藤 久夫(東レリサーチセンター 先端技術調査研究部)・林 昭宏(ニデック 技術部)

概要
国際宇宙ステーションに搭載する眼科機材の検討の一環として、スリットランプの固定治具2種を試作した。試作治具について放物線飛行航空機内の模擬無重量環境下で評価者により操作性を、TV画像により固定性能を評価し、良好との結果を得た。

本文
【1. はじめに】  日米欧加露の参加による国際宇宙ステーション(ISS)は1999年より組立が開始された。2000年9月には日本人宇宙飛行士の搭乗するスペース・シャトル飛行で新たな構造が追加される予定である( http://jem.tksc.nasda.go.jp/iss_jem/index.html )。  ISSでは当面3ヶ月間程度の乗員交代周期を予定しており、船上の医療機材もスペース・シャトルに比べて大幅に強化される。日本からも医療機材に貢献すべく宇宙開発事業団・宇宙医学研究開発室で検討を行っている。  宇宙船内では塵埃が床に落ちず浮遊して角結膜異物となり易い。実際に眼痛の症例が発生している。ISSに搭載が予定されている医療機材(ISS Crew Health Care system, CHeCS)には眼圧計(Tonopen)以外には眼科用機材の搭載予定がない。そこで今回、スリットランプを原型とする眼科用システムが開発対象として適切か否かを検討する一環として、患者頭部-検査装置-検者の位置固定案を無重量模擬航空機にて評価したので報告する。

【2. 方法】  頭部固定治具を2種試作しビジネスジェット機内に設置した。CCD-TVカメラで角膜を拡大撮影しながら放物線飛行により約20秒間の無重量状態を得、この間に治具の装着性を評価した。評価者は4名でうち航空宇宙医師が1名、スリットランプ装置エンジニアが1 名、バイオエンジニアが2名である。 2.1 試作治具 2.1.1 机固定型治具  既存の眼科用スリットランプの顎受け台と頭部バンドを機内の台にボルト固定したものである[画像1]。 2.1.2 頭部固定型治具  医用ヘッドランプ用のマウントにCCDカメラを取付けたものである[画像2]。 2.2 放物線飛行  名古屋空港南西のK-1空域で26000〜20000フィート(8〜6 km)の高度で約20秒間の無重量模擬機動を10回実施した[動画1][画像3]。機内では治具2種からのTV画像をモニターしながら治具の評価を行った[画像4]。http://jsc-aircraft-ops.jsc.nasa.gov/ rgpindex.htm

【3. 結果】 3.1 机固定型治具による頭部固定  無重量投入直後は頭が浮くため固定が悪くなるが、患者用の握り棒を把持して顎を顎台に、額を額当てに押しつけることができるため無重量継続中の固定は比較的良好である[動画2][動画3]。握り棒と異なり頭部バンドはあまり固定に寄与せず、バンドをはずしても固定状況は変化しないことが明らかとなった。 3.2 頭部固定型治具による頭部固定  治具が頭部と同一の動きをするため眼画像は常に安定している[動画4][動画5]。治具の装着直後も固定は良好である。

【4. 考察】  パイロットや宇宙飛行士の身体能力のうち視覚は重要事項の一つである[文献1][文献2]。スペース・シャトルでは飛行中の眼圧が上昇するとの報告がある[文献3]。  米国NASAでは宇宙飛行士コホートを対象とした疫学研究を行っているが、延べ122名のスペース・シャトル飛行中の眼症状の報告で異物5.7%、眼痛9.0%、乾燥感1.6%の他に近距離視力の低下が15.6%報告されている。ミール宇宙ステーションに438日間搭乗したポリャコフ飛行士/医師は「木星の(ガリレオ)衛星が肉眼で見えた[文献1]」と述べており、飛行の長さで視力の変化が異なる可能性がある。  ISSのスリットランプは非医師でも使用できるよう画像伝送能力を備え、異なる場所に可搬な小型装置とする必要がある。小型化には頭部固定型のスリットランプが有利であるが、異物除去の操作中に患者が頭部を動かすと装置と患者の位置関係が保たれていても検者と装置の位置がずれてしまう問題がある。机固定型の場合はラックに固定する以外に、ISSの床に設けられる標準のソケットに固定する方法が考えられる。  今後は今回の飛行結果の画像の定量的解析を継続するとともに、眼科専門医による機材デザイン並びに微小重力模擬下での操作性評価の段階に進む計画である。

【文献】
1. 「パイロットと視覚」所,佐野,福本.宇宙航空環境医学;36(2):75-94, 1999.
2. Fazio GG,et al. Nature;228(268):260-264, 1970.
3. Draeger J,et al. Aviat Space Environ Med;66(6):568-70,1995.
4. 「地球を離れた2年間」ポリャコフ. WAVE出版. 1999.

図1

図2

図3

図4

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