2006年FAI医事委員会(FAI-CIMP)参加報告
2006年6月26日
日本航空協会嘱託 嶋田 和人
(日本グライダークラブ、日本滑空協会)
要点
1. WADA倫理委員会が検討中の、低酸素訓練禁止についてCIMPより「安全のため行っている航空低圧チャンバー訓練を含めることに反対」とのコメントをWADA宛てに発した。
WADAコードに従い検査を実施しているスポーツ団体が3つしかないことに関連し、「競技外でのドーピング検査はエアー・スポーツに必要性を認めない」旨をFAI総会向けのコメントとして発した。
1.
2006年度のFAI医事委員会はローザンヌのオリンピック博物館にて6月16日から18日にかけて開催された。日本委員およびCIMP副委員長として嶋田が出席。
2. 6月16日金曜日の理事会
(ア) 嶋田も副委員長として理事会に参加した。Moebenpick Hotelにて21:00-24:00。
(イ) 翌日からの議事とWADAへの対応内容についての整理を委員長、副委員長、書記など8委員にて討議を行った。WADA対応声明の文案を決定。
3. 6月17日の技術会
以下、聞き取りメモのため数字などの誤りの可能性があることに留意されたし。
(ア) オリンピック博物館冬季オリンピック会議室にて終日の開催。
(イ) 患者の航空移送についてのスペイン委員の技術報告
International SOS社の医師である委員からの報告。グライダーなど僻地で受傷した場合の移送は問題である。
(ウ) 卵円孔開存症の各国での扱いについての議論
軍では特に卵円孔を特定しての検査は行われていない。
(エ) 航空事故のヒューマン・ファクターの解析についてのドイツ委員の発表と議論
@ 各国分担で解析が行えないかの論議あり。ドイツではDG社がスポンサーとなっている。事故分析手法としてはHFACTSが米海軍で開発され広く知られている。
A 死亡時の解剖の手順は国の違いもあり問題になる。ドイツでは以前は全数解剖されていたが現在では判事が要求しないとしなくなった。英国では伝統的に全数解剖である。全数では120,000件になる。
B エアースポーツではクラブメンバーにどう教育の機会を確保するかが問題。実際の事故に即しての説明にしないと興味を持ってもらえない。医学関連の原因は7%、スピンが60%なので優先順位も配慮すべき。DaECとOSTIVで教材のホームページがある(http://www.daec.de/flusi/ostiv/stopchrashing01.htm)。スウェーデンでは教育の成果として事故の低減があったという(50%?)。
(オ) 22の症例提示により各国での航空身体検査取り扱いの現況についての論議。添付。
(カ) 各国からの年次報告。添付参照。
ハング・パラについてフランスから提案があったとのこと。
EASAのrecreational pilotについて機体の範囲を5.7tとする案と2tとする案があり調整を要す。
ICAOの身体検査の新インターバルへの対応も各国でそろうのかどうか今後の話。
(キ) JAAからEASAへの移行状況についての議論。
(ク) EASAレクリエーションパイロット免許について各国の議論の紹介。米国では既に実施済。規制に合致した機体の製造が始まっており、日本でも考慮を行政に促すべきである。
(ケ) WADAドーピング規制対応について、詳細事項について討議。翌日の決定の準備を行った。
4. 6月18日の総会
(ア) 出席確認など。US、チェコは欠席届け。
(イ) 前回のワルシャワ会議議事録確認。
(ウ) 委員長報告。基調演説。
(エ) 各国報告についてのコメント。
・フランスでは航空会社からの収入がなくなりスポーツ団体が破産の危機。
・イタリアでは150km/hのウルトラライトあり。ウルトラライトのみ増加。グライダー減少。パラグライダーは微増。飛行機は減少。ウルトラライトは数も事故数も不明。
英国ではNPPLが21,000名いるが減少している。パイロット総数は50,000。無法飛行が増加している印象あり。
・スイスではリクリエーションパイロットの身体検査はソロ前、50歳、60歳、65歳、70歳、以降二年おき。
・ドイツではJARと国内免許の並立。医学はwaiver検査のコスト高が問題。JAR反対ホームページがあり25,000の署名あり。http://www.jar-contra.de/
European Society of Aviation Medicineが組織されている。
・オランダではAMEでなくスポーツ・ドクターがグライダーパイロットの身体検査を行っている。ドイツの方が身体検査が安く流れている。ドイツよりフランスの方が基準がゆるいので流れている。AMEの要件に120例/3年を課そうという。AMSの指名の問題か? 2005年には200フィートの索切れで複座がウィンチに突っ込んでいる。組み立てピンぬけで翼の分解あり。Ultralightの事故で規制強化。若年者に興味を持たせるための”I FLY”プログラムがあり1年間補助をする。14歳より。National FS associationができた。
・キプロスではCABのスリム化が進行中。クラスIIのAMEは二名。AMCはなし。新しいエアースポーツ用の飛行場計画は凍結中。6月にモーターグライダーでの死亡事故があった。
・今まで騒音問題にてウルトラライトは禁止されていたのが解けた。EMPIC。リクリエーションパイロット免許を検討中。グライダーは初回検査のみなどの仕組みを考案中。Safety Seminar, Safety Flght Officerを実施している。
・アイルランドでは航空スポーツは瀕死。ヘリコプターのみ順調。1931年より使われていたGA用飛行場が売却され駐機料がE15からE1,200/年に上昇。ダブリンから50kmの所に飛行場を新設する検討がある。NPPLの動きなし。模型は興隆。パラシュート、曲技は横ばい。バルーンはまずまず。軍の参加取りやめによりエアショーはなくなってしまった。
・ポーランドではエアロクラブの財政が破綻。支所は59が各地にある。他に団体が32? インシデント300件、9名死亡、36受傷、全損14機、破損35機。結婚式でモーターグライダーでキャンディを撒こうとして落ちたケースがあった。C152とぷハッチで低空の事故あり。
・他の話題として航空機からの遺灰撒きの問題、米国のスポーツパイロット制度の状況、カナダのクラス4の状況、ヨーロッパのDiscrimination Actの件(障害のあるパイロットの助けになる)、EASAにエアバスから圧力がある件、など。
・JAR manual of aviation
medicineはコマーシャルでは適用、自家用ではフランスで非適用、英国では適用であるも問題多し、ドイツでは適用の後パイロットが36,000から32,000に減少、アイルランドとイタリアでは非適用。EASA MDM032委員会でEuropean Air Sportsの適用の論議?
・JARは紙販売だったものがwebに1年前に載った(ドイツ語のみ?)。
(オ) EASAフライトレビューは2年に1回。身体検査は毎年。ICAOとの整合をどうするべきかについて討議。CIMP勧告としては*ICAOにそろえるべきとされた。
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身体検査頻度 |
クラスII |
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|
<40歳 |
40-50歳 |
>50歳 |
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ICAO |
5年おき |
2 |
2* |
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JAR |
5 |
2 |
1* |
(カ) FAIのWADAドーピング規制対応について。
@ WADA倫理委員会が検討中の、低酸素訓練禁止についてCIMPより「安全のため行っている航空低圧チャンバー訓練を含めることに反対」とのコメントをWADA宛てに発した。
A WADAが「パイロットの能力を高める」としているdonepezil hydrochlorideについては効果の証拠のあるなしに係わらず、適用がアルツハイマー病のみであることからエアー・スポーツの規制上は無関係とのコメントをWADA宛てに発した。
B WADAコードに従い検査を実施しているスポーツ団体が3つしかないことに関連し、「競技外でのドーピング検査はエアー・スポーツに必要性を認めない」旨をFAI総会向けのコメントとして発した。WADAは2006年末までに各スポーツ統括団体の適合度の報告をする義務がある。WADA、国、スポーツ統括組織の義務は別々とのこと。スポーツ統括組織がWADAと契約を結んでいる場合は前者の作業との計数になる。
(キ) 嶋田より、米国航空宇宙医学会との提携について提議した。委員長が前米国航空宇宙医学会長にロンドンで来週会う際に詳細について質問することとなった。
(ク) 役員選挙。
委員長、副委員長とも残留となった。嶋田は副委員長に再選された。
(ケ) 2007年度会議の予定
オーストリアからICASM学会にあわせて9月に招聘があり、受諾された。
(コ) ワーキンググループ
WADAドーピング規制対応、ヒューマンファクター事故解析(HFACTS)について設置。
5. 嶋田の所感
WADAコードによるドーピング規制は日本ではパラシュート種目で1名が競技外検査の対象として登録されてはいるが、他種目とともに所在確認を常に行うことからして実際的な困難があり実施している競技団体は3つしかないという。
日本では昨年末にドーピング規制を盛り込んだユネスコ憲章に署名したことから国内法規の整備が開始されるべきところであるがその動きはない。イタリアでは国内刑法の対象であるが実際に適用されたことはないそうである。ヨーロッパ法としては成立するとは思えない。日本政府も動きがないことから従来の状況が変わる契機が近くあるのか疑問である。
CIMPではFAI総会の決定を追認しWADAコードを受諾しているが、必ずしも医学的に同意しているわけではない。
ドーピング規制については従来どおりエアースポーツの大会開催要項に記載するとともに他の競技団体の動向眺めのみが必要であろう。
スポーツパイロット、またはリクリエーションパイロットの制度については国内でも行政に働きかけ、FAAやEASAの範囲の機体が日本でも使用でき航空が振興されるよう働きかけるべきである。
身体検査症例検討
UK CAAの関連症例とその処置に対する討議。
#1 CAA solo OK, passenger no, 10年したらpax ok。
JARではin airで1%のリスク許容。Professional drivingでは2%。10年no fit。
20%-private driving。
EEGについては12例をCAAから各国に配布し評価を求めたところ明らかに異常な例についても異見あり、EEG不要の根拠となった。
#2 no restriction
#3 ok to fly
#4 unrestricted。尿検査なし。
#5 1年飛行制限。No pax.
#6 OK to fly, warned of MS recurrence。数ヶ月で車椅子の症例もあるMSで転記の予測性が問題。
#7 restricted OPL。>2%の判断は高年齢。
#8 no limitation
#9 体重減ならOPL。現在飛行不可。
#10 fly w/ OPL。typeTの28例あり。
#12 –8D
#13 SSRI fly。OPL。
SSRIについてはイベリア航空で個別検討で飛行の例あり。
Mild brain infarctionについて10年OKだったがフィンランドではとれずスウェーデンで取れた例あり。PRKがノルウェーで取れた例あり。不一致が問題。
#14 type specified by instructor
ドイツには車椅子パイロットの団体あり。
#15 FAAで取れていた例。
#16 no fly
#17 temporary grounded check ride failure
ドイツではクラブのインストラクターが不可とするのは基準的に困難あり。
ポーランドの例。90dB hearing loss。無線は要求あり。
スイスからexercise EKG >0.2mm ST depressionの例。評価後飛行可。
空中写真家トルバネン氏の死亡例。CVD.
英国では60hの教育と一日のシミュレータがAMEに必要。
スイスではAME90名。
ヨーロッパのパイロット数は800,000名。
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