「Winning II」レビュー
George Moffat著 Knauff and Grove, Inc. US$32.95 ISBN0-9704254-4-9
日本から買うと送料$13で$45.95と250ページで造本が割りにちゃちな本としては高価ですが、グライダー競技に関心があれば必読の書。
前文によれば前著の'Winning on the wind'のストックをTom Kanuffが売り切ったところから出版の話が出たとのこと。前著は日本グライダークラブの故藤倉三郎氏が和訳を途中までやっていました。前著も小型の本にしては高価でしたが有名なもので、藤倉氏も出場しMoffat vs. Reichmannの下馬評だったユーゴスラビアのコンテストでの空中衝突の話なども出ていました(藤倉氏はこの衝突のガグルの上の方にいて見ていたそうです)。
著者はなにせ年なので最近は車でバックして自分のVentus2のラダーを壊したりしているようですが、米国では今でも競技履歴#1のパイロットです。ソアリングよりも競技の底辺の広いヨットでの経験が競技に生きているようです。3つスポーツをしたと書いてありますが残りの一つは不明。評者は著者に会ったことはありませんが、オーストラリアで会うようなニコニコした人ではないらしいです。現役時の仕事は英語の先生。著者の奥さんのお父さんはCaesar Creek Soaring Clubにいたので一緒にRidge Soaring Gliderportへ飛びに行ったことがあります。彼はGEでダイアモンドの合成をしていた人で1993年にもう確か85歳だったはず。
新著は内容が大幅に変更されています。前著にあったASW-17、Nimbus(1)などの機体の評価は省略。まあ話が古いので当然でしょう。構成は口演や記事の寄せ集めの形式なので話が重複していたり、知らない人にとってはピンとこない物故者の話があったりと読みやすさはいまひとつです。しかし前著にもあった競技者の心理の話は拡充されており、2004年までの話が含まれているのでソアリングの本としての充実度は高くなっています。数年前にSoaring誌に掲載された著者の競技での成績向上のための一連の記事の内容はほぼ網羅されています。競技パイロットの心理状態をトップパイロットが記述した資料は英文ではあまりに少なく、本書とJustin Willisの雑誌記事くらいでしょう。
グライダーの世界選手権も技術的にはトップ10に差はなく、心理要素が勝敗を分けるという話はスキーの世界大会でも言われていることで納得できます。国際競技会に出ようというパイロットには必読の書。機体のシールの改善など記録狙いのパイロットにとってはところどころ参考になりそうです。
著者はInternational 14footerのカテゴリーのヨットの競技でも米国代表をしていた経歴があり、米国では単座の殆どがExperimentalカテゴリーであることもあって大規模な機体の改造(スパンの拡張、エレベーターの形状変更、水タンク増設など)の話が出てきます。ヨットではone-designの競技でもクリートの打ち代えなどは普通のことのようなので、日本で飛ばしている場合の機体いじりの感覚とはかなり異なります。
本書を含め、評者の推すグライダー基本文献は、
1. 【初期訓練から銀賞】ライヒマンの訓練テキスト(Segelfliegen. Die praktische Ausbildung) Thomson Publications (1980)から英語版が出ています。
2. 【クロスカントリー】ライヒマンのクロスカントリー本(Streckensegelflug)英語版が出ています。
3. 【競技】本書。
4. Sailplane&Gliding誌の記事
5. 航空気象の本。
6. Practical Wave Flying(初版は評者和訳あり-日本グライダークラブ)
(2005年12月嶋田 和人)
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