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特筆
斉藤☆朋之
先ず特筆すべきは
素材の有価値無価値を問わず
実在する一切の物体を
卓上斜めに固定する術に関する
故人若しくは飯屋の
一段上たる巧妙さだった
つまり
徳利であろうが湯呑みであろうが
一級との折り紙つけ
その実中身と来た日には
下戸にも分かる安酒仕込み
かろうじて残そうが雫一滴まで舌に乗せようが
容易に斜めに固定したものだった
所謂
弥次郎兵衛の原理ゆえ
左右の均衡さえ保てば
斜めであろうが逆さであろうが固定可能
と口外するのだが
真似て企てる勇気に溢れた吝嗇家供
こぞって脱帽したものだった
考えてもみろ
地軸すら斜めに固定している
との強弁に脅かされれば
革命党員であろうが
鎌と才槌の割符携えようが
目前に現出した狭斜の巷は
疑うべくもなかったし
ずらり卓上に居並んだ
八合五勺しか入らぬ一升瓶の林にそって
自身すら傾斜させたものだった
尚
飯一杯と焼き秋刀魚ロハにする
との高札に誑かされ
負けじと俺も挑んではみたが
斜めに固定したがるのは終生下腹の一画だけ
故人若しくは飯屋の手並み拝見し
襟元正して暖簾潜る毎日だったが
飯屋の身代傾いたのも果たして
故人の仕業だったのか
更に
冷汗ぬぐい上着丸めて街頭に佇む頃
オリオン星座め
決まって鍍金の抜刀斜めに挿頭し
見下ろし
俺の信条確かに左傾し続ける実感も
果たして
故人の仕業だったのか
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